ウェイファインディング

ウェイファインディング(Wayfinding) は一般にポリネシア航法とも呼ばれ、広義にはオセアニア諸地域で用いられているGPS、六分儀、羅針盤、海図、クロノメーターなどの機器を用いない航海術のことである。狭義には、1980年にハワイ在住のナイノア・トンプソンが考案・命名した航法技術のことである。スターナヴィゲーションとも呼ばれることもある。

ポリネシアミクロネシアの先住民たちは極めて広大な海域に点在する島々で生活していたため、航海カヌーによる遠洋航海を行う必要があったが、その際には陸地が一切見えなくなることも多かった。そこで彼らは天体観測、海流や波浪の観測、生物相の観察、風向の観測などから自らの現在位置と方向を推測する航法技術を発達させた。これが広義の「スター・ナヴィゲーション」である。


【実際の航法】


実際に船を出してから目的地に到達するまでの航法は、航法を行う海域や流派によって著しく異なるので、一般化して解説することは難しい。例えばソシエテ諸島からアオテアロアニュージーランド)を目指す場合、南東の貿易風を利用してポート・タック(左舷開き)で南西の進路を維持し、日没時の太陽の位置で微調整を行えば、かなりの確率でアオテアロアに到達可能である。またカロリン諸島のように島と島の間が詰まった海域では、エタク・システム(航法師が航法の目印となる島々の心的表象を航海カヌーを取り巻く水平線の上に配置し、航海カヌーの進行に従ってそれらを移動させる。航法師は目印となる島々の心的表象の位置によって現在位置を把握する)が有効である。

ここではナイノア・トンプソン式の航法技術による、ハワイ・タヒチ間の航法を紹介する。

出航後、航法師は北東貿易風に対しポート・タックを指示。ひたすら東への距離を稼ぐ。ソシエテ諸島はハワイより東に存在する為である。
航法師はハワイ諸島、マルケサス諸島、ツアモツ諸島、ソシエテ諸島クック諸島の心的表象を把持し、それらを航海カヌーを取り巻く水平線上に配置する。これらの心的表象は航海が進むに従って水平線上を水平に移動する。心的表象の位置は32方位のスター・コンパスの区切り(ハウス)によって把握される。
航法師は予めプラネタリウムにおいて学習してある星々の動きを観察し、現在の緯度を推測する。緯度は北緯何度、南緯何度というような数値によって把握される。緯度算出に利用される星の数は百前後である。
航法師は船の針路を天体と海洋波の観察によって推測する。基本となるのは天体観察であり、天体が観察出来ない時には海洋波を利用する。方角の推測に用いられる天体は数個程度である。
航海カヌーがソシエテ諸島より充分に東に出たと航法師が判断した所で、航法師は航海カヌーを真南に向ける。
赤道無風帯通過後、南東貿易風に対し詰め開きに近いポート・タックでなるべく西に流されないようにして南下。ツアモツ諸島を目指す。
航海カヌーがツアモツ諸島に充分に接近したと航法師が判断した段階で、航法師は乗組員に鳥類の探索を指示。アジサシ類が最初の目標となる。また椰子の葉などの漂流物も目印となる。このような陸地探索法は「エクスパンデッド・ランドフォール」と呼ばれる。
アジサシ類が発見されると、航法師はアジサシの行動の観察から島の方向を推測。航海カヌーをそちらに向ける。
ツアモツ諸島のいずれかをランドフォール(視認)し、必要であればそこからソシエテ諸島までの航程を再計算する。
再びエクスパンデッド・ランドフォールを行い、東側からタヒチ島に接近、入港する。



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